COLUMNコラム
2023年米国研修コラム
米国研修コラム|11
和食ライフスタイリスト
管理栄養士
合田 麻梨恵さん
アメリカ大豆からできた大豆油を
もっと日本の食文化に取り入れたい
大豆は日本人にとって最も身近な食品で、大豆油をはじめ、豆腐、醤油、納豆といった和食に原料として使われていますが、その原料大豆の多くがアメリカ大豆であることは知られていません。
今回の研修を通じて、大豆の生産農場、大豆油の製造プロセスの現場などを直接視察する貴重な機会を得られました。今回の学びを通じて、大豆油を日本の食文化にも取り入れることができると感じています。
研修の視察先と概要
Beck's Hybrids社
大豆などの原料から種を取り出す一連の流れや、家族経営の農家から全米を代表する種子会社へと成長した歴史などを見学させていただきました。会社の規模を大きくするにあたって、生産効率をあげたり農家からの要望に応えるだけではなくマーケティング視点から必要な種子づくりを試みたりと常に新しいチャレンジをされている企業でした。
BUNGE社
農業生産から保管、加工、販売と一貫した流通を行う全米を代表する会社で、座学にて一連の流れとパッキング〜保管庫の見学をさせていただきました。日本では見たことのない巨大な工場や敷地内に運搬用の線路と列車があり、また工場内はほぼ人ではなく機械で作業しているなど売上を巨額な設備投資に回して生産効率を上げて成り立たせているのを一部体感できました。
ケビンケリー農場
「日本の個人農場」のイメージを持っていると、良い意味で裏切られました。風力タービンが100基程置ける農地で1億円レベルのトラクターが数機あるといった巨大農場だったためです。アメリカで農業が発展している理由として大きな土地があり、大自然があり、大きな機械があるためとおっしゃっていて、日頃日本の農家巡りをしてみてきた農地や自然、機械と比較すると納得のできる違いを肌で感じられました。
パデュー大学
最先端の研究を行っている大学で、大豆やコーンの種を取って現在取り組んでいる研究についてお話を伺いました。アフリカのβ-カロテン不足を補うためのコーン開発に着手して世界の栄養不足問題に対峙していたり大小のドローンを活用して実用化できるよう研究されていたり、パデュー大学発信で世界の常識がつくられていくのかもしれないと感じました。
コルテバ社
殺虫剤や除草剤などを作っている会社で、研究段階の流れを見学させていただきました。一番驚いたことは発酵技術を活用して殺虫剤を作られている点で、和食の世界的流行もヒントになったのではないかと感じました。有機物の発酵を利用して、例えば大豆に影響なく雑草が生えないような除草剤成分などを研究し製品化しており、身体に害がないそうです。発酵の力でサステナブル製品が誕生している事実を知り感動しました。
レセプションPARTY
アメリカの大豆油について貿易事情やマーケティング事情、健康事情、サステナブル事情などを学ばせていただきました。アメリカ大豆油、ブラジル大豆油、アルゼンチン大豆油を比較研究した結果、アメリカ大豆油の成分は精製コストや精製収量のバランスが良く経済的だということで、有効活用する手段はいくつかありそうです。
今回の視察研修を終えて
視察を通じて特に印象に残ったのは、パデュー大学での質問です。良い土づくりには硫黄が不可欠ですが、SDGs活動として石炭利用を減らした地域では石炭等が発生させる硫黄が不足して作物の栄養不足が判明したとおっしゃっていたことです。SDGsは多角的面から熟考して取り組む必要があると感じたことと、またその栄養不足を発見したのがドローンだったので農地におけるAI活用がもっと実用的になればより効率的な生産が可能になると感じました。また良い土づくりにはイオンが必要なこと、食には農業が大切であることも共感でき、健康な身体づくりには国境はないとも感じました。
アメリカ大豆油を日本の食文化に取り入れるポイントは?
まず1つ目として、日本の食卓における油を大豆油に代えることで骨の強化(ビタミンK)や美肌(α-トコフェノール/ビタミンE)をサポートできる可能性があります。日本の食卓でよく使用されているオリーブ油、ごま油、調合油(サラダ油)、菜種油、牛脂と大豆油に含まれているビタミンKとα-トコフェノールを以下の表で比較しました。
ビタミンK μg | α-トコフェノール mg | |
大豆油 | 210 | 10.0 |
オリーブ油 | 42 | 7.4 |
ごま油 | 5 | 0.4 |
調合油 (サラダ油) |
170 | 13.0 |
菜種油 | 120 | 15.0 |
牛脂 | 26 | 0.6 |
※全て100gあたりの量
※日本食品標準成分表2020年版(八訂)参照
ビタミンKは6種類の中でも含有量が多く、α-トコフェノールは3番目の含有量です。ビタミンKは血液凝固や骨形成のサポートをする働き(※1) があり、ビタミンEは抗酸化作用や老化やがん、免疫低下の原因である過酸化脂質の生成を抑える働き(※2)があります。
※1 国立研究開発法人|医薬基盤・健康・栄養研究所|「健康食品」の安全性・有効性情報|ビタミンK|詳しくはこちら
※2 厚生労働省|e-ヘルスネット|抗酸化ビタミン|詳しくはこちら
2つ目として日本の食文化を海外に展開する際に、大豆油を使用した日本食にすると現地の方々が好む味わいに近づき低コストで提供できる可能性が考えられます。日本での大豆油活用はまだ普及していませんが、大豆油を消費している主要国である中国、米国、ブラジル、インド(※3)では一般的です。人は日常的に食している味わいを好むため、それらの国々では受け入れられる可能性が高いと考えられます。
※3 Mordor Intelligence|世界の大豆油市場 - 成長、トレンド、COVID-19 の影響、および予測 (2023 – 2028)|詳しくはこちら
展開する国にもよりますが、今後、日本の食文化を海外で展開する際にはアメリカ大豆油を活用すると経済的にも栄養的にも美味しさ的にも使いやすいと感じました。また日本の食卓においては、違和感なく日本人が好む料理に仕上がるよう試行錯誤が必要だと感じています。1割程度しかありませんが、non-GMOの大豆油であれば日本でも食用普及ができると感じているので、小さいマーケットに対して少しずつ浸透させていけたらと考えています。
運営団体
アメリカ大豆輸出協会(U.S. Soybean Export Council:USSEC) は世界80ヶ国でアメリカ大豆の市場拡大や輸出のプロモーションをおこなうマーケティング機関です。USSECには優良な輸出業者・大豆生産者・政府機関・関連団体等がメンバーとして所属しております。
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