COLUMNコラム
2019年米国研修・
合格者コラム
米国研修コラム|01
ケンコーマヨネーズ株式会社
稲葉 保奈美さん
大豆油のサプライチェーンの上流をたどる ~各所で品質管理の取り組みを視察
アメリカ大豆輸出協会(USSEC)は、米国視察研修プログラム「JAPAN SOY OIL MASTERS TEAM 2019」を7月21日~28日の8日間の日程で実施しました。これは、大豆(油)のサプライチェーンを巡る研修企画であり、「第2回 ソイオイルマイスター検定」(2018年5月実施)に合格し、その中から選抜されたソイオイルマイスター7名が参加しました。
今回は、総集編として、大豆油を使用する食品加工メーカー、ケンコーマヨネーズ株式会社の品質保証本部で活躍されているソイオイルマイスター、稲葉保奈美さんに報告していただきます。
視察研修は、初日の移動、参加メンバーとの懇親会を経て、インディアナ州を拠点にスタートしました。インディアナ州は、イリノイ州、アイオワ州、ミネソタ州の次に大きな米国大豆の主要生産地の一つで、年間約800万トンもの大豆が生産されています。
インディアナ州では2日にわたり、同州の大豆協会の事務所、大豆関連の企業、大規模農場、大学、農業技術関連の研究センターを回りました。
インディアナ大豆アライアンス(ISA)は、全米の各大豆生産州にある大豆協会事務所です。インディアナ州の大豆は日本では「IOM大豆」(Indiana、Ohio、Michigan大豆)としてよく知られています。このインディアナ州と、オハイオ州、ミシガン州で生産される大豆は、たんぱく質の含有量が高いことから食品や食用大豆として日本に輸出され、豆腐や豆乳、植物油などの原料として使用されています。
インディアナ州では、土壌を守るために、不耕起栽培や被覆作物の栽培に取り組んでいます。これにより、土壌中の水分量が適切に保たれ、作物を十分に育てることができ、安定した収量を確保することができます。また、こうした被覆作物の効果によって有機物が豊富に含まれた土壌で育った大豆は、たんぱく質量が高くなるなど、栄養価の面でもプラスになることが報告されています。
米国農務省 自然資源保護局(USDA NRCS)は、全米各州に2,800以上の事務所を置く、保全的な農業方法についてのアドバイスや生産者の監査を行っている政府機関です。ISAでは、NRCS担当者から、普段生産者向けに実施している土壌の健康に関する講義も受けました。不耕起栽培や多様性に富む被覆作物、適切な場所に適性量だけを撒く肥料・農薬管理、精密農業テクノロジーなどといったサステナブルなアプローチを日々実践していくことで、大豆生産にとって核となる土壌を守り、それが安心・安全な大豆供給に繋がっていることを学びました。
ISA訪問後、実際に大豆の大規模農場を視察しました。Phil Ramsy's農場は4,000エーカー(東京ドーム約350個分)の大規模農家で、大豆、とうもろこしを中心に不耕起栽培や被覆作物の栽培を行っています 。ここでも肥料や除草剤がきちんと管理、使用されているほか、異なる品種が混ざらないように、時間をかけて使用器具のクリーニングを行うなど、顧客から求められている品質に応えるよう努めています。
Beck's農場センターは、米国を代表する名門校、パデュー大学の北に位置する、農業関係の教育イベント、トレーニング、理事会などが開催される施設です。ここでは、大豆の収量向上や栄養価向上などを目指す最先端の研究発表を聞きました。インプットを最小限にしつつ生産量の最大化を目指すような、インディアナ州の大豆、とうもろこしの生産者や学生、研究者にとって有益なプログラムが提供されています。また、無人航空機やドローン、イメージ技術などを利用した研究も行なわれています。
今回、インディアナ州では、大豆関連企業も訪問しました。
Bunge社は米穀物メジャーの1社で同社の拠点は大豆や菜種の畑に近い場所を中心に設けられています。同社では大豆など穀物を受け入れる際、水分、たんぱく質、脂質などの含有量や異物、損傷の有無を確認するなどの品質管理が行われるなど、全米油糧種子加工業協会(NOPA)の基準を満たした品質が担保されています。
また、同社では新しい品種である高オレイン酸大豆についても農家と契約して栽培しています。高オレイン酸大豆油は、脂肪酸組成でオレイン酸の構成比が従来の大豆油の3~4倍で、飽和脂肪酸も20%減と改善されており、また加熱による油の劣化が抑えられるため、揚げ油などが長持ちし、フライヤーも汚れにくくなる点が特徴です。同社では、高オレイン酸大豆油の需要拡大を図るために周知活動を行っています。今後の市場動向がどうなるのか、興味深く感じました。
バイオディーゼル燃料の製造を行っているIntegrity Biofuels社にも訪問しました。食品用ではありませんが、ここでも不純物の除去など、品質へのこだわりがうかがえました。
インディアナ州での視察研修を終え、オハイオ州へ移動しました。ここで訪問したCGB社は、伊藤忠商事と全農が出資する企業で、伊藤忠商事の食糧部門(川上・川中)の海外主要事業会社の一つとして穀物の売買や物流事業を行っています。
CGBリバーターミナルは、米国穀物の集荷拠点となっており、今回訪問したエレベーターでは非遺伝子組換え大豆(Non-GMO大豆)と、とうもろこしを取り扱っていました。日本向けに輸送されるものは、ここからバージ(艀)を使ってミシシッピ川を下り、ニューオリンズまで運ばれます。その際、「受け入れ時」、「バージへの積載時」、「積載後」の3回サンプリングを行い、Non-GMOであるかどうかの検査を実施しており、Non-GMOの品位を確保するための管理がなされていました。
視察研修の終盤は、ルイジアナ州のニューオリンズで実施しました。
ニューオリンズでは街に出て、ウォルマートやホールフーズなどのスーパーマーケットを見て回り、様々な大豆関連製品、大豆油を使用している製品を見ることができました。
ニューオリンズ港には、ミシシッピ川上流で収穫された大豆が南下して運ばれ、全米各地から様々な穀物が集荷されます。この港では年間6,000万トンもの穀物を扱っており、世界各地への輸出拠点となっています。
ここには全農グレイン(ZGC)という、全農の子会社があります。同社施設では年間1,300万トンの穀物を扱っており、大豆はその半分を占めています。単一の穀物エレベーターとしては世界最大で、ここから日本向けの大豆も輸出しています。
ニューオリンズでは最後にThionville社を訪問しました。同社は貨物検査会社であり、穀物や油脂の検査を行っています。連邦穀物検査局(FGIS)での検査を通った穀物が流通していますが、さらに品質を担保したいという輸出業者からの検査依頼に対応しています。
今回の視察研修を終えて
今回参加した視察研修では、大豆農場やエレベーターのスケールの大きさに驚かされました。異物の除去や栄養成分の確認など、安定した品質の確保に努められている様子がうかがえました。
私は現在、ケンコーマヨネーズ株式会社の品質保証本部に所属しています。今回、実際に大豆農場や大豆関連製品の流通現場へと足を運び、大豆油がわが社に納品されるまでにどのようなルートをたどってきているのか、実際に目で見て確かめることができました。普段は、原料メーカーから提出される“規格書”という書類の確認などを業務で行っていますが、パソコン上での作業となるため、これまではどのような原料であるのか、どのような工程を踏んでいるのか、ぼんやりとしたイメージでしか持つことができませんでした。今回視察できたことで、より明確なイメージを持って、こうした確認作業が進めることができると考えています。
また、食糧などの資源は無限にあるわけではない中で、持続可能(サステナブル)な生産活動に力を入れていることを知り、今の恵まれた環境が当たり前ではないことを改めて認識しました。日常業務や日常生活の中で、今すぐにサステナブルな活動として、私自身に何ができるのかはまだ分かりませんが、少しでも意識して環境を守り続けなければならないと思いました。
運営団体
アメリカ大豆輸出協会(U.S. Soybean Export Council:USSEC) は世界80ヶ国でアメリカ大豆の市場拡大や輸出のプロモーションをおこなうマーケティング機関です。USSECには優良な輸出業者・大豆生産者・政府機関・関連団体等がメンバーとして所属しております。
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