COLUMNコラム
2023年米国研修コラム
米国研修コラム|04
日清オイリオグループ株式会社
技術本部 生産技術開発部
生産技術課
田島 真梨絵さん
大豆生産のサプライチェーン全体を把握 技術革新と先進的な経営に裏打ちされた アメリカ大豆
今回の米国研修ツアーを通じて、大豆種子生産、大豆生産、大豆を使用した製油工程等の上流~下流に至るまでのプロセス全般を視察、把握できたことが、大変貴重な経験になりました。そのプロセスで学んだことを振り返ってみたい。
Beck's Hybrids社
当社は、米国で3番目に大きな種子ブランド、市場シェアは約8%。1937年に設立され、中西部および近隣地域の農家にサービスを提供しているということでした。農家と契約して種子の生産を行っており、non-GMOも含む様々な品種の種子を生産しています。Beck'sとして種子の輸出はしておらず、Beck'sが製造した種子を用いて、農家が大豆を生産し、インディアナ大豆協会を通じて輸出を行っています。生産した種子は洗浄→セパレーター(ごみ取り)→選別機(カラーソーター)→篩分け(重量)→薬剤コーティング→乾燥→梱包(紙袋・コンテナ・ミニバルク等)というプロセスを経て、出荷されます。
種子の品質を制御するべく、選別機(カラーソーター)による選別を行っていました。時間当たり数十トンの種子の処理が可能で、AIの導入により変色や形状不良の種子を学習させて除去するシステムを構築、全体の処理量を落とすことなく、効率的に品質を保持することができていたことに感銘をうけました。
パデュー大学
バデュー大学は、インディアナ州の理系・経営の分野で名高い州立総合大学です。今回訪問したイノベーションセンターは、大学の教員、スタッフ、学生向けに最先端技術を多く有する施設であり、大豆農家など生産者等からの出資により設立されました。
イノベーションセンターとして広大なテスト農場を有し、主に開発した種子の生育観察及び、観察技術の開発を行っています。ハイパースペクトルカメラによる日光や風の種子に対する影響評価、種子の選別機(種子の色や形による選別や、種子数のカウントが可能)、ドローンを用いたデータ収集等を実施・開発しています。農学系とエンジニアリング系の学生が同一施設内で学びを深めることで、農学で得られた知見の実現化や課題の解決に一早く取り組み、生産者に還元する産学連携の体制・システムが確立されていました。
コルテバ社
当社は、ダウケミカルとデュポンが合併したダウ・デュポンの農業部門、種子事業等を担っています。従業員数は約21,000人で、140カ国に拠点を展開しています。
グリーンケミカルチャレンジアワードを受賞するなど、サステナブルな食品開発・燃料開発に取り組んでいます。今回の視察では、微生物由来活性物質を使用した農薬原薬開発の工程を説明していただきました。非常に広大な土地に真新しい研究施設が建てられていて、ガラス越しの窓からの視察ではありましたが、スケールアップ用の発酵機が数十台並んでいたのは圧巻の光景でした。
担当者の説明で印象的であったのは、新たな農薬開発に掛かる費用は、平均で2億6000万円/種もかかり、また、作物に有害な昆虫の同定、農薬に対する耐性の管理が重要になるという指摘でした。原薬探索についてはハイスループッドなスクリーニングと、スケールアップ用の実験設備が充実しており、効率的かつスピーディーにプロジェクトが進められています。今後さらにスクリーニングの規模を拡大していく予定とのことで、益々自動化が期待される分野であると感じました。
ケビンケリー農場
ケビンケリー農場は、コーン/大豆/小麦等を生産しており、3100エーカーの農地を管理しています。GMO、non-GMOを栽培していますが、non-GMO大豆は栽培時に掛かるコスト(農薬費)がペイしないとの話が印象的でした。
生産した大豆は10万ブッシェル/機のサイロ×10機にて保管しているとのことで日本とは比較にならないほど大規模なもの。農場では穀物栽培だけではなく、風力タービンによる発電を実施、タービンを設置する際の土地のリース代で収益をあげていました。風力発電機ひとつで1.65mW/hr/機の発電が可能とのこと。大型の農耕機械を多数所有しており、広大な農地を効率的に管理しているのが印象的でした。
BUNGE社
当社は、米国において農場から消費者向け食品に至るまで一貫した事業を展開。主に農産物と商品の購入・保管・輸送・加工・販売に関わるビジネスを手掛けています。
搾油工程は下の写真にある様に、工場の外観のみの見学でしたが、パッキング工場は稼働時に視察を行いました。当工場は150名が勤務しており、内27名が交代で24時間体制でパッキング工程に携わっていました。この工場では、DUNKIN用のショートニングの充填、ドラム、斗缶への充填及び製品の保管等を行っているということでした。
今回の視察研修を終えて
普段の業務の中では供給された大豆の品質のみに着目することが多かったですが、本研修ではその種子の開発、栽培地、農薬開発等の全体のプロセスを視察することができ、非常に勉強になりました。農地の大きさはもちろん、米国大豆農家の多くが家族経営で営まれており、しかもそれを少人数でのオペレーションしており、それを可能にしている巨大な農耕機械にも圧倒されました。また、耕作地をリースして風力タービンを設置する等、環境にも配慮しつつ、新たな収益にも繋がる複合経営が進められていることにも感銘をうけました。
運営団体
アメリカ大豆輸出協会(U.S. Soybean Export Council:USSEC) は世界80ヶ国でアメリカ大豆の市場拡大や輸出のプロモーションをおこなうマーケティング機関です。USSECには優良な輸出業者・大豆生産者・政府機関・関連団体等がメンバーとして所属しております。
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