COLUMN

2025年米国研修コラム

米国研修コラム|02

五十嵐 麗来

昭和産業株式会社
人財戦略部 人事管理室

五十嵐 麗来さん

テキストでは学べない
「米国農業の広大さ」
「生産者の想い」を実際に体感

Triple S Farms

家族経営の農家であり、現在は三世代目になる。4,200エーカーの農地を持ち、「大豆(2,200エーカー)、とうもろこし(1,600エーカー)、トマト(400エーカー)」の3種類の作物を生産している。8月から11月は3種類の作物の収穫が続くため忙しい時期である。大豆は50%が種子用であり、損傷の無い丸ごとクリーンな大豆を出荷する必要があり、収穫にはとても気を使っていると話されていた。

訪問時には多くの農機具を見せていただいた。下の写真は大豆を作付けする機械であり、47列の種まきを同時に行うことができる。時速6マイルの作業で、1時間で40エーカーをカバーすることができる。90エーカー分の種を積むことができるため、2時間程度は連続で作業を行うことが可能である。土の掘り起こしを抑えながら種をまける機械であるため、環境問題にも目を向けていることが感じ取れた。

  • 農機具
  • 農機具



下の写真のトラクターの性能は340馬力。GPSがトラクターの上部についており、運転席のモニターで位置を確認しながら作付けをすることができる。

  • トラクター

パデュー大学ロボティクス研究所

インディアナ州パデュー大学の中にある研究所を訪問した。2018年に稼働を開始した施設であり、植物のサイズ・色、根の成長、収穫高、などを、複数のセンサー・カメラ・X線を使用して測定している。(写真:左)自動環境管理システムを備えた部屋では、「温度・湿度・光・Co2濃度」の管理をして植物の成長を測定することができる。(写真:右)検証条件をプログラミングし、履歴データとして保存することができるため、いつでも同じ条件で検証を行うことができる。

最近の検証は、光(日照時間)やCo2濃度を管理し、Co2が植物の成長にどの様な影響を及ぼすのかについて調査していると教えていただいた。当施設では一貫性を持った検証で「植物本来にどのような力があるのか」を研究しているため、自然界で太陽光のアングルや強度が時間によって変わることは考慮していないとのこと。また施設内では植木鉢で育てるしかないため、自然界で育つのと比較して根の成長に制限があること、植物の病害についても考慮しないとのことであった。

  • 植物
  • 植物

PenceAg訪問

PenceAgはアメリカの農業の中心地であるインディアナ州ラファイエット近郊に位置し、非遺伝子組み換え大豆・有機大豆・コモディティ大豆を扱い、種子の調達・生産・包装・輸送のビジネスを行っている。大豆が流通するまでの“始めから終わりまでの全て“に関わることができる企業だとアピールされていた。

生産に関しての現在の契約は、15,000エーカーである。また、試験場を持っており、サステナビリティを改善する農業法や、ベストクオリティの大豆を生産する方法についての試験を行なっている。現在は、タンパク量の多い大豆を生産する方法についての試験を行っている。
PenceAgはサステナビリティを一歩進めた「再生可能農業」を目指している。土壌の健全性を上げ、最適なサイクルで土壌を回すことを意識している。大豆・とうもろこしは土壌の水分が高いとうまく育たないため、スポンジのような健全な土壌を作る必要がある。PenceAgでは良い土壌を維持するため、大豆・とうもろこしの輪作も行っている。

今回の訪問では、大豆の受け入れ後の工程をご説明頂いた。

・大豆が搬入されたトラックからサンプルを3箇所取る。スクリーニングを複数回行い、異物を取り除く。
・密度・水分の測定。水分は13%以下でなければならない。※今年の大豆は水分が少なめ。直前のサンプルの結果は9%であったとのこと。
・サイズ→フォーム(形)→カラー(色)の順番で検査を行う。

①サイズ
スクリーン:悪い大豆は上部に残る。

②フォーム
スパイラルセパレーター:回転することで、割れた大豆・平らな大豆は機械の真ん中に集まり、丸い形の良い大豆は通過し、次の機械へ流れていく。

③カラー
カラーソーター:ハイスピードのフルカラーカメラで1粒ずつ撮影し、色が適さないものは外れる。色味の異なる大豆(主に紫)は虫のダメージを受けている。
カラーソーターでは形の選別もできるため、ここまでのステップを通過してしまった規格外品を排除できる最後の工程となる。(規格外品:エクストララージなど)

工場内見学の最後に、「農業は洋服の販売と同じでバイヤーとセラーがマッチすることが大切である。PenceAgでは、約30件の農家と契約しているが、1対1の関係を構築しながら取引ができる量でビジネスを行っている」とお話しいただいた。GPSの使用など、デジタルデータを活用した農業法に進化していても、ビジネスを支えているのは「人・コミュニケーション」であると改めて感じさせられるお話しであった。

今回の視察研修を終えて

米国研修はテキストでは学べない「米国農業の広大さ」「生産者の想い」を実際に体感しながら学ぶことのできる有意義な時間でした。農家訪問やカンファレンスに参加する中で「アメリカ産大豆への自信と情熱」を強く感じました。研修での訪問先は何世代も続く家族経営の農家が多かったのですが、ただ農業を続けるだけではなく、消費者が求めているものを学びながら“ビジネスとしての成長・進化”を目指していることに心を打たれました。また、サステナビリティについても意識が高く、大規模な生産を行うアメリカの農家の取り組みは大きな影響力があると感じました。
そして、今回の研修での「日本チームメンバーとの出会い」も大変貴重なものでした。通常の業務では交わることのできない他社の方々と共に時間を過ごした経験は、自身の仕事への活力にもなりました。
最後になりましたが、今回の研修の機会をいただいたアメリカ大豆輸出協会の皆さまに心より感謝申し上げます。この研修で学んだことを今後の業務に活かして参ります。

運営団体

アメリカ大豆輸出協会(U.S. Soybean Export Council:USSEC) は世界80ヶ国でアメリカ大豆の市場拡大や輸出のプロモーションをおこなうマーケティング機関です。USSECには優良な輸出業者・大豆生産者・政府機関・関連団体等がメンバーとして所属しております。

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