COLUMN

2025年米国研修コラム

米国研修コラム|01

木谷 友香

ハウス食品グループ本社株式会社
研究開部 アグリ素材開発部

木谷 友香さん

サプライヤーの方との交流などを
通じて学んだ川上の視点を活かし、
研究開発の立場から
米国の大豆産業に貢献できれば

Corteva agriscience 訪問

同社は2019年にダウ・デュポン社の農業部門が分離独立して誕生し、現在は大豆やトウモロコシなどの種子事業と、農薬、バイオスティミュラント資材をベースに世界115カ国超で展開し、その売上高は約180億ドルにものぼるそうです。現在、人口増加やタンパク質需要の拡大、土地・水の枯渇問題、世界情勢不安等の要因から、現在生産者には高い生産性が求められており、同社はさらなるバイオ技術革新による課題の解決に取り組んでいるとのことです。下記研究施設の見学もさせていただきました。

①有用成分を化学的アプローチで生み出す化学合成研究
②有用成分を生物学的アプローチで生み出す微生物培養研究
③有効成分を作物に散布テスト研究
④蜂群崩壊症候群(蜂がいなくなる現象)の研究


すべてがデジタル管理されており、人為的ミスや改ざんを防ぐ仕組みが完備されている点や、R&D設備の多くが自動化され、省人化が進められていることに驚きました。また、コルテバ社は一日に400万ドル(約6億円)もの研究費をかけているそうで、アメリカの農薬・種子分野の市場規模の大きさとR&Dの役割への期待の大きさが感じられ、印象に残る訪問先となりました。

  • 排水システムのチューブ

高オレイン酸大豆カンファレンス

①米国産大豆のサステナブルな生産について
900エーカーを保有する1世代目の家族経営の農家であり、高オレイン酸大豆、エンドウ、小麦などを栽培している農家。サステナブルな取り組みとして、不耕起栽培、カバークロップ、輪作、GPS管理、花粉媒介生物の保全、栄養管理、Variable Rate Technology(VRT)(畑の場所によって必要な資材(肥料、農薬、種子など)の量を調整して投入する技術)の導入を行っているそうです。メーカー・生産者様もこうしたサステナブルやデジタル化・花粉媒介生物の保全取り組みへの意識が高く、取り組みがしっかりと進められていることがアメリカならではであると感じました。

②インディアナの高オレイン酸大豆
インディアナ州は大豆の収穫量が第3位であり、コーンの生産量も第5位と多いことが特徴です。圧搾工場はインディナ州に7か所あり、丸大豆、大豆油、そして圧搾後の大豆ミールも取り扱うため効率的に原料加工と輸送・販売が実現できているようです。また、オレイン酸大豆の健康面や機能面や、飼料への活用など、用途の幅広さについても新たな学びに繋がりました。

③高オレイン酸大豆・高オレイン酸油の活用
2030年には高オレイン酸大豆の作付けは300万エーカーに到達し、内食品が40%、産業用として20%、飼料用として40%の使用割合になると期待されているようです。現在は、ネスレやレイズ、プリングルス、ケロッグなどのメーカーが高オレイン酸大豆を採用しており、飼料用としては乳牛の餌、産業用としてはスプレーオイルなどに使用されているとのことでした。高オレイン酸大豆は健康面・機能面に優れ、熱・酸化安定性・賞味期限が従来の大豆と比べて約3倍延長できるという利点があることから、食品へのさらなる活用が期待できると感じました。

④高オレイン酸の調達について
高オレイン酸大豆はIPハンドリング運用の必要性から、基本的に先物契約で、契約には求めるスペック(脂肪酸の組成、non-GMO vs GMO)やサプライヤーの選定・サンプル評価・供給条件や価格交渉など、何段階ものステップがあります。こうした観点からも、今回の研究のように、様々なサプライヤー・生産者と直接対話し、情報交換ができる機会は重要であると感じました。

  • 農耕機(TripleS)
    農耕機(TripleS)
  • パデュー大学の研究施設
    パデュー大学の研究施設
  • インディー500の記念写真
    インディー500の記念写真

今回の視察研修を終えて

普段は日本国内で研究開発を担当しており川上の大豆農家やサプライヤーの方と直接関わる機会は少ないので、今回の研修は川上部分の多くの人の協力で製品が成り立っているということが実感できる貴重な機会となりました。アメリカの広大な農場や研究施設の訪問、サプライヤーの方との交流などを通じて学んだ川上の視点を活かし、研究開発の立場から米国の大豆産業に貢献できればと思います。

運営団体

アメリカ大豆輸出協会(U.S. Soybean Export Council:USSEC) は世界80ヶ国でアメリカ大豆の市場拡大や輸出のプロモーションをおこなうマーケティング機関です。USSECには優良な輸出業者・大豆生産者・政府機関・関連団体等がメンバーとして所属しております。

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