COLUMNコラム
2024年米国研修コラム
米国研修コラム|06
昭和産業株式会社
吉住 功輝さん
大豆使用者および大豆製品の供給者として 責任のある仕事をしていきたい
Pence Group
Pence Groupは生産者と契約をして大豆を仕入れ、ユーザーに出荷する種子業者である。 2024年は約10,000tの大豆を取り扱う(来年の目標は 20,000t)との自己紹介があった。 契約農地は「約1万エーカー(≒4,000 ヘクタール)」で、38もの大豆の品種を試験しているとのこと。最も効率良く利用できる大豆の品種を見極めているそうである。ひとくちに「大豆」といってもそんなに多くの品種があることに驚いた。
Pence Group自身でも自社の試験農地で栽培試験をやっており、見学した際には大豆畑に別の農作物を植えて大豆を覆い、土壌の乾燥や雑草侵入の予防にしている取り組みの紹介を受けた。これらの植物は「Cover Crop(被覆植物)」と呼ばれ、本研修ではたびたび耳にするキーワードであった。カバークロップは飼料等に利用しているそうである。
包装工場(内部は撮影禁止のため写真はなし)で受けた説明は大半がハイオレイック大豆(以下、「ハイオレ大豆」)に関する内容であった。そして Pence Groupで出荷しているユーザーは大豆油メーカーではなく、ハイオレ大豆で豆腐や醤油などを作っている企業とのことだった。Pence Groupの取引先は主にアジアであるが、日本の企業はないそう。
Purdue Corn & Soy Innovation Center
インディアナ州のパデュー大学の中にある、大豆とコーン等の穀物の研究センターである。
パデュー大学は1869年に創設された大変歴史のある総合大学で、2024年の世界大学ランキングで89位にランクインするほどの名門校である。なお同ランキングでは84位に大阪大学、89位に東京工業大学がランクインしているので、パデュー大学のレベルの高さがうかがえる。2010年にノーベル化学賞を受賞した根岸栄一博士(2021年逝去)の所属大学でもある。
パデュー大学は特に林業や農業の研究が盛んである。実は林業は農業と並んでビジネス面で意義のある学問である。なぜなら、アメリカでは木材の輸出も大きな市場を持っているからである。
学内には600haもの試験農場があるほか、牛、馬、鶏、豚、羊、魚などの飼養もおこなっている。なお「600ha」と聞いて東京の狭小キャンパス大学出身の私はその大きさに「さすがアメリカはスケールが違うなあ」と驚嘆したが、後日調べてみたところ北海道大学はその10倍以上の約6,600haもの面積を持っているらしい。
同センターは2016年に1,500万ドルの資金を投入して設立された。
うち1,000万ドルは大学の自己資金だが、残りの500万ドルはUSSECを始めとする関連団体等の寄付であったという。寄付文化が根強いアメリカらしいエピソードと感じると同時に、USSECの豊富な財源を物語っていると感じた。なお USSECの主な財源は大豆生産者からのマージンで、生産者の売上の0.5%が USSECに納められる仕組みだそうである。
案内してくださった Jason adams氏はモンサント社に約20年間勤めていたとのこと。
メインで紹介いただいた研究内容としては、高スペクトルカメラを搭載したドローンを使った土壌環境や農作物のPhenotype(外見に現れる遺伝的な特徴)の調査である。パデュー大学では20年ほど前からドローンを用いた研究を行っているが、見せていただいた初期のドローンは飛行機の模型のようなものであった。
大気汚染の減少は当然ポジティブに評価されがちであるが、それにより土壌に含まれるリンの量が減少し、大豆栽培にとってはマイナスの影響があることなどもドローンを使った調査で明らかになったそうである。これは私にとって目からうろこの話であった。
実演でみせていただいたドローンは重さが約55ポンド(≒25kg、アメリカの説明で出てくる数字はいちいち馴染みのある単位に変換しないといけないのがややこしい…)、40mくらいの高さまで上昇でき、1時間の充電で20分ほどの飛行が可能だそう。飛行には連邦政府の許可が必要で、エリアによってセキュリティレベルが異なるそうである(軍事基地の近くだと最高クラスのセキュリティが求められる)。パデュー大学の周囲はそこまで高いセキュリティレベルは求められていない。
農場見学 Christopher Farms
社長のDylan Christopher氏は、後述のIndiana Soybean Alliance(ISA、5/24訪問)の役員でもある。
農地は自己所有だけでなくリタイアした生産者から土地を借りているリース分もある。それらを併せて約2,800エーカー(≒1,120ha)の農地を持っており、大豆とトウモロコシを育てている。この広大な農地をフルタイム社員わずか5名で管理しているとのことで、それが可能なのは巨大な農業機械によるものである。
見学した圃場で印象的だったのが、大豆畑にカバークロップとして小麦を植えるという取り組みである。小麦も生産物として収穫でき、このような方法を「インタークロッピング」と呼ぶ。大豆と小麦のほかに大豆とコーンの混合も試験を行っているそうで、今秋の収穫が楽しみであるとのこと。
ホテル周辺のスーパーマーケット
公式スケジュール終了後、同行メンバーでスーパーマーケットに行った。ホテルから徒歩圏内にはないためメンバーのアプリから Uberタクシーを利用して10分程度の距離にあるWalmartを訪問した。Walmartは一時期日本の西友の株主でもあったが、食料品だけでなくおもちゃ、衣類、日用品などを幅広く取り揃えている点は西友と似た雰囲気を感じた。
食用油の棚はかなりの広さがあった。
キャノーラオイル、オリーブオイルなどは馴染み深いが、「Vegetable Oil」と書いてある商品が多く並んでいた。日本の「サラダ油」とほぼ同じと思われるが、USSEC 西村氏によると Vegetable Oilの原料は大半が大豆油とのことである。キャノーラ油は1.42Lのボトルで$4.24(≒650円くらい)だったので、日本よりやや高いかもしれない。価格高騰が騒がれているオリーブオイルは1.4Lで$21.97(≒3,400円くらい)なので、日本と大きくは変わらない印象であった。日本であまり見かけない油種としては、アボカドオイル、ココナッツオイル、スプレーオイルなど がある。特にスプレーオイルは各油種で展開されており、かなりのラインナップだった。キャノーラオイルのスプレーを1缶購入して(227gで$2.52≒390円)自宅で使用してみたが、吹き付けた油は白っぽくなってしまい、あまり食欲をそそるものではなかった。フライパンではなく例えばオーブンで鶏肉をグリルする際などに、肉にまんべんなく油を塗布する目的としては使い勝手が良いかもしれない。
農場見学 Eck Family Farming
親子3代で営んでいる大豆とコーン生産者である。案内してくださったクリス氏の父、14歳の息子が農場を手伝っており、他にいる3人の娘たちは看護師やロースクールなど、農業とは別の道を歩んでいるとのことであった。
大豆はハイオレ種も含めて20種くらいの品種を育てているそう。ハイオレ種とその他の品種は特に育て方の違いはない。
また収量も特に違いはないとのこと。
こちらの農場でもやはりカバークロップを植えることで土壌を健全に保っているそうである。
Eck Family Farming では30~40%程度はハイオレ品種を育てている。それらの油がどこの国で使用されているのかを聞いてみたところ、クリス氏は中間業者に販売しているだけなので「知らない」とのこと。USSECのスタッフいわく、ドバイや中東などではないかとのことで、やはりこれも油向けではなく豆腐等の食料品向け需要と思われる。
生産者目線で見た時のハイオレ大豆はプレミアムが$2~$4つくそうである。前述の通り、生育の手間や収量に大きな違いはないとのことなので、この辺りがアメリカの大豆生産者がハイオレ大豆をしきりに推しているヒントなのではないかと感じた。
アメリカでも農家の後継ぎ問題は深刻になっているそう。かつてアメリカは全人口の20%が農家だったが、現在は2%になってしまったとのこと。なお、そのような話をされるなかでもクリス氏は「ウチは息子がいるので大丈夫」とアピールを忘れていなかった。
Victory Field
インディアナポリスの中心地に移動し、「Victory Field」という野球場に行った。
なぜ野球場がランチ会場なのか到着するまでさっぱり分からなかったが、Victory Fieldは「インディ アナポリス・インディアンズ」というアメリカのマイナーリーグの野球チームの本拠地で、USSECはそのチームと 2 年前から協定を結び、ハイオレ大豆を納めているという縁があるからだそうである。
ちなみに私は野球に関する知識は全然ないため「インディアナポリス・インディアンズ」を調べてみたところ、2007年ごろに桑田真澄が一時期所属していたこともあるようだ。
ランチはビュッフェで、ハイオレ大豆を使用した料理がふるまわれた。春巻き、チキンクリスピーなどのメニューで、匂いや味わいにハイオレ大豆の特徴などを感じることはできなかったが、美味しい料理であった。
Indiana Soybean Alliance
全米の各大豆生産州にある事務所のインディアナ州バージョンで、教育・研究・広報活動をおこなっている。「ISA」と略される。
CEOのコートニー・キンガリー氏がインディアナの大豆生産およびISAについてレクチャーしてくださった。キンガリー氏はとてもハキハキした女性で、いかにも“経営者”という印象を受けた。
インディアナ州は州の面積では全米32位である一方で、農地面積は全米8位である。肥沃な土地と 農作物に適した気候のおかげ。
そんなインディアナで最も多く輸出されている作物(重量ベース)は大豆である。
ISAの使命は世界中で使える大豆をインディアナから広めていくことで、キーワードは「サステナブル 」である。農家の方々にサステナブルな農法(カバークロップの利用や、不耕起栽培※)などを推奨している。
※農地をあえて「耕さない」農法。かつては耕すことで土壌の健全性が保たれると思われていたが、実際にはそれにより土壌の養分や水分の流出を招いていることが明らかになってきた。
そこで、収穫後にそのままにして翌年の作付けをおこなう生産者が増えている。なお、不耕起栽培は雑草の侵入を招きやすいので、カバークロップの利用という対策にもつながる。
もうひとつのキーワードは「価値の創出」である。従来の食用にとらわれない、エネルギーとしての大豆油、石油の代わりとしてタイヤの原料になるなどといった利用法がそれにあたる。
そして今後も価値ある大豆生産を続けていくには技術革新も不可欠である。ドローンによる生育状況の確認などをおこなっている。(←パデュー大学で見学した内容とつながった)
講演終了後に質疑応答となった。
Q:USSECのデータで、過去70年間で土地利用は半分になったのに対して収量は2倍になったというものを見た。何が要因か?
A:(キンガリー氏)カバークロップの活用やテクノロジーの進化(おそらく遺伝子組み換えのことを 指している?)により収量は上がっている。
私も下記質問をしてみた。
Q:環境への配慮といった点では、パーム油が東南アジアの熱帯雨林を破壊しているという懸念 が高い一方で、大豆も広大な農地を開発していることが環境破壊につながっているという声もある。 そうした懸念に対して、我々のような大豆製品の供給者はどのように答えれば良いか?
A:(キンガリー氏)答えはとてもシンプルで「アメリカの大豆を買えば良い」。米国生産の大豆はサス テナブルな農法を使っており、環境への影響の心配はない。
「環境の影響への心配はない」と言い切る回答にやや驚いた。
BBQ レセプション at Howell Farm
本研修に参加している各国のソイオイルマイスターと合同で、Howell Farmにて歓迎会があった。総勢100名くらいの参加者がいた。
「アメリカ式のバーベキュー」と聞いていたので肉などを豪快に炭火で焼いて食べるものを想像していたが、並んでいた料理は
・煮た鶏肉と牛肉を繊維状にほぐしたもの
・チーズソースのかかったマカロニ
・甘いお豆の煮物
・サラダ
であった。
上記以外にフライドチキンとフィッシュフライを出すキッチンカーも来ており、これはハイオレ大豆油のPRも兼ねているとのことであった。フライドチキンもフィッシュフライもスパイスが効いた味付けで、かつおそらく油はこのイベント中交換していない様子だったので、味や香りでハイオレ大豆油としての特別感を感じることはなかった。
ホテル周辺のスーパーマーケット②
下記3店舗をまわった。
・TRADER JOE'S
・Kroger
・WHOLE FOODS MARKET
上記のうちTRADOR JOE'Sは比較的小規模店舗でほぼ食料品しか扱われていなかったが、スパイスやお菓子、カップ麺などのPB品が目立った。
なおカップ麺を購入して帰国後に食べたが、具はほぼなく、スープは色の割に味がほぼなく、麺は不思議なニュルニュルとした食感で、何とも言い難い代物であった。
KrogerとWHOLE FOODS MARKETはどちらも大型店で、5/23に訪問したWalmartと似た雰囲気であった。ただKrogerの方がパックに入った総菜などを幅広く取り揃えている印象を受けた。ホテルでの夜食用に何か買おうかと迷ったが、フライドチキンは鶏半羽~1羽分のサイズでとても1人では 食べきれなさそうだったので断念した。
フライドチキンミックスのようなものがないかと探してみたが、それらしいプレミックス製品はほぼなかった。パン粉やホットケーキミックスらしきものはあったが、無糖ミックスは日本のスーパーマーケットの方がずっと品揃え豊富に感じた。
SBO Masters Celebration Day
午後は再び各国のソイオイルマイスターと合同で、ソイオイルマイスターの研修会であった。
6題の基調講演と、立食パーティーというスケジュールである。
なお当日の講演資料は、下記URLにて閲覧可能となっている。
https://ussec.org/wp-content/uploads/2024/05/SBO-Masters-Master-Deck.pdf
【講演 1】食用油の展望:Rodrigo Martinez 氏(Stonex Group Inc)
油の価格は需要と供給だけではなく、お金の価値(金利等)によっても左右される。
油の価格を左右する大きなポイントとして、ロシアとウクライナの戦争がある。製品価格に対する非常に大きなインパクトがあった。ウクライナからの輸出がなくなり、価格の上昇を招き、かつ先行きも見えない。石油価格も懸念される。
もうひとつのポイントはアメリカと中国の緊張関係。これは中国と台湾情勢に起因する。中国がアメリカからの輸入をかなり絞っており、1,000ミリオントンの輸入が減った。
世界的な植物油オイルマーケットは2025年にかけて増加が見込まれる。80%以上の生産をカナダ、中国、インド、ウクライナ等で賄っている。
大豆油の輸出はアルゼンチンが南米でナンバーワン。ブラジルの南部で雨が増えてることが短期的な 影響を与えるかもしれない。
アメリカでは直近で1,200万ガロンほどの大豆油を輸入しており、その 50%以上は中国からである。また動物性油脂の使用なども、アメリカ産大豆にとっては脅威。
油の価格変動には、戦争、通貨政策、輸入油や動物性油脂との共同などの要素がある。こうした要素をしっかり捉えていかないといけない。
SAFの存在も重要。大豆油はサステナブルな市場となっていく。
【講演 2】大豆バイオベースの工業製品および消費者製品:Barry McGraw氏(♙irable Research Lab)
McGraw氏は大豆油の工業品の開発を経験してきた。
現在は、オハイオ州コロンバスで非営利団体を運営している。大豆にまつわる様々な調査・研究を行う設立5年程度の団体。大豆は実は40~50年間工業界で使われている。
大豆油ベースの屋根素材などもアスファルト会社を共同して開発。現在は50の州で適用事例がある。
【講演 3】高オレイン酸大豆油-品質が価値を高める:Jorge Martinez氏(USSEC)
ハイオレ大豆油と一般大豆油を50%ずつで配合した場合の試験結果の報告。
フライオイルの酸化:リノレン酸の方がオレイン酸よりも早く酸化する。ハイオレ大豆油は温度に対する耐性が高い。トコフェロールが抗酸化作用を持つ。
この効能により、オイル交換の回数を減らせ、またクリーンでオイリーな風味を長持ちさせ、フライヤーの発泡も防げる。フライヤーの発泡が油の酸化を進める。
フライ寿命が長いことで、初期の油購入コストは高くても、外食店でのコストが長期的に削減される。
他の油とブレンドすることもできるので、コスト調整は可能。
フライ特性:ハイオレ大豆油と一般大豆油を 50%ずつ配合したブレンド油と、従来の外食店での油(大豆・ひまわり・パームと酸化防止剤、消泡材の混合)での比較をコスタリカのレストランで実施。レストランには3つのフライヤーがあった。
色の濃い油が寿命になると、次の比較的綺麗な油と取り換えられる仕組み。
極性化合物(TPC)のデジタル測定器で毎朝と午後測定。6月1日から14日間テストを実施。
ハイオレ大豆油のブレンド品は5日目・8日目・11日目にオイル交換を実施。
従来のオイル(4日目・7日目・13日目にオイル交換)のTPC測定値と比較すると、ハイオレ大豆油の方がTPC値が優位に低い。
14日間での油使用量はブレンド品222.32kgと従来品240.00kgで、ブレンド品の方が8%少なくて済んだ。
ブレンド品を1年間使用(6日に1回交換)するとすると、$3,060のコストになる。
従来品(4日に1回交換)の場合、$4,087になる。
つまり1年間で上記の価格差分$1,027だけコスト削減につながる。さらに、フライヤーの掃除にかかる労務的なコスト削減にもつながる。
そして、ハイオレ大豆油を使うことで酸化防止剤や消泡材等の添加物も不要になる。
【講演1~3に関する質疑応答】
Q:ハイオレ大豆油の理想的なブレンド率は?
A:オリーブオイルは精製されたオイルではなく不純物や香りがある。我々としては不純物の少ない油と のブレンドを推奨する。
精製されたごま油ならブレンドもあると思われる。
Q:工業用にハイオレ大豆の用途はあるか?
A:ある。いま5つのプロジェクトがあるが、より高い温度を使えるようになることや、石油ベースワックスの代替品などの用途も考えられる。
Q:大統領選はどういうところに注意を払えばよいか?
A:バイオ燃料の税制優遇は来年変わる。現・民主党政権は非常に大きく再生燃料を推しているため、大豆生産者にとっては消費が増えているといえる。
ただ、共和党(つまりトランプ陣営)は政権が変わっても生産者に影響を及ぼすことはないと言っている。
【講演 4】大豆油のマーケティングメッセージと人の健康性について:Dr. Michelle Braun(Soy Nutrition Institute)
ソイニュートリションインスティテュート:食品企業、研究者、農家、コミュニケーターなどが集まり、専門性を共有する団体。
多くの企業や団体とパートナーシップを結んでおり、日本企業ではハウス食品もそのひとつ。その他、カーギルやUSSECなどがある。
「人間の健康」が研究の焦点。
大豆油は不飽和脂肪酸で、必須脂肪酸(リノール酸)を多く含む。
大豆油は炎症を起こすという誤った認識も広がっているが、むしろ逆で炎症を減らす。そして大豆油は心臓病予防にもなる。
これはエビデンスもあるため、自信を持って言える。
【講演 5】コスタリカのオイル市場:Marianna Chinchilla 氏(Inolasa)
コスタリカは雨と森林が多いところで、大西洋の南西に位置する。
人口は500万人以上で、エコツアーが盛ん。
Inolasaは大豆油等を独自のブランドで展開している企業で、主に企業紹介の内容。
【講演 6】サスティナビリティのマーケティング動向:Tarik Eluri 氏(USSEC)
二酸化炭素の9%は森林破壊とその他人間活動によって発生している。
2023年のデロイトのレポートによると、若者世代(Z世代、ミレニアル世代)の70%前後が環境に対する懸念を感じている。
食品会社のトップ(ウォルマート、ネスレ、ダノン、ユニリーバ)などもサスティナビリティの「NET ZERO」にコミットしている。
農業のサスティナビリティに関心を持っている。
カーボンフットプリント(製品のライフサイクルにおけるCO2排出量)について:アメリカとブラジルの大豆を比較、あるいはアメリカ大豆とカナダの菜種などと比較しても、アメリカ大豆はかなり温室効果ガス排出量が低い。
講演終了後は、立食パーティーであった。
各国のソイオイルマイスターたちが一堂に集っているといっても、なかなか他国のマイスターたちとのコミュニケーションは図れなかった。
INDY500観戦
「INDY500」は毎年メモリアルデー(5月最終月曜日)の前日の日曜日に開催されるカーレースで、調べると1911年から開催されている大変に歴史のある大会らしい。
レース開始は13時半だが、朝の7時にバスでホテルを出発した。会場近くになると民家が軒並み「〇ドルで駐車可能」というような看板を掲げており、とてつもない数の乗用車が集まっていた。恥ずかしながら全く予備知識がないまま行ってしまったが、おそらく全米(もしくは世界中)から人が集まる一大イベントであることを実感し、朝早くホテルを出発しないといけない理由も分かった。
USSECがスポンサーになっているという縁で、食事や休憩ができる控え室が用意されていた。またバックヤード見学もできるということで、整備中のレースカーの車庫などを見学させていただいた。日本から出場している佐藤琢磨選手の車庫を見に行くと、どこかで見たことのある方がいて、なんと愛知県の大村秀章知事だった。愛知県とインディアナ州が友好都市提携を結んでいることから、インディアナポリスで開催された経済フォーラムに参加されていたのだという。大村知事も日本人の集団は珍しかったらしく、「どこの会社の集まりなの~?」と聞いて来られた。メンバーが「ソイオイルマイスターという大豆油関係のツアーです」と答えると、全然ピンと来ていないご様子だった。せっかくなので名刺交換をさせていただくと「お~昭和産業かあ、大手だね大手」とおっしゃってくださった。
レースは13時30分に出走予定であったが、あいにくなことにちょうどその時間に大雨が降ってしまった。コースが乾くまでは危険なので車は走れないと聞いていたため「これは中止か」と思いながら控え室で雑談に興じていたところ、なんと14時半ごろに「そろそろ始まるので観戦席に来るように」とのアナウンスが流れた。観戦席に着いてからも何のアナウンスもないまま延々と時間が過ぎ、15時半ごろについに開会式が始まった。なお、延々と待つ間も会場の人々の興奮は全く冷めず、イライラしている様子のアメリカ人は全然見当たらなかった。この「何事も楽しもう」という精神はぜひ見習わなければいけないと思った。
開会式は約1時間ほど続いた。おそらくアメリカの有名であろうアーティストによるパフォーマンスや、国歌斉唱(国家の伴奏が流れると自然と会場の人々が帽子を取って立ち上がり、胸に手を当てている様子は外国人ながら感動した)、軍用機のアクロバット飛行(とても格好良かった)などが続いた。
そして16時半ごろにやっと出走となった。なお、もともとの予定ではちょうどホテルに向けて帰る時間である。INDY500は1週2.5マイル(約4.023km)のコースを200周(計500マイル)するレースであり、だからINDY500という。これを3時間ほどでゴールするので平均速度は270㎞/h程度となるが、最初の数週の助走を経ての急加速がすさまじかった。途中からはレースカーの爆音と残像しか見えず、浜松駅で見送る「のぞみ」よりも明らかに早く感じたので、おそらく300km/h以上は出ていたのではないかと思う。
残念ながら17時半ごろでホテルに戻ることになり、ゴールの瞬間はホテル近くのステーキハウスで夕飯を食べながら見ることになった。かつて牛乳メーカーがスポンサーだったことから優勝者は表彰式で牛乳を一気飲みするパフォーマンスが伝統になっているらしい。今回優勝したアメリカのジョセフ・ニューガーデン選手(当然知らない方なので名前は帰国後にインターネットで調べた)も、牛乳を飲んでいた。ちなみに佐藤琢磨選手は14位だったが、そもそも途中でクラッシュせずに200周走り切れるだけでとてつもないことだと思った。
今回の視察研修を終えて
昭和産業に入社してアメリカ出張は2回目(前回は2019年)だが、アメリカを訪問するたびに彼の国の“豊かさ”を痛感する。お店に入ればガンガンにエアコンを聞かせ、食べ物は容器からあふれんばかりの量が盛られ、行く先々で大量のお菓子や果物などが食べ放題で積んである。“もったいない精神”など微塵も感じない雰囲気は、羨ましくもありその豪快さに思わず笑ってしまうような可笑しみを感じる部分でもあった。
また、USSECが野球チームやINDY500といったイベントにも出資をしているくらいに、大豆生産のビジネスとしての巨大さにも驚嘆した。今回の研修で特に印象深かったのは、USSECが唱える「アメリカ産大豆」としての価値である。私は2020年度より製油事業に携わっているが、アメリカ産とブラジル産の差は主に価格面であり、またアメリカ産は畑に密に栽培されているため一粒あたりに行き渡る栄養素が少なく、窒素分が低い傾向があるという印象である。ところがISAのキンガリーCEOの 講演や、SBO Masters Celebration Dayでの講演などから、アメリカ大豆に関わる方の多くは「アメリカ産大豆こそ、品質面や持続可能性において最高のものなのである」というプライドを持っていることが非常に伝わってきた。
さらにカバークロップや不耕起栽培などの取り組みは今回の研修を通じて初めて知ることができ、アメリカ産大豆の特色を知るうえで大変勉強になった。しかし一方で、やはりとてつもない広さの土地を開拓して農地にしていることや、その仕組みを維持していくためのインフラ等による環境へのインパクトをどう評価していくか、という点(キンガリーCEOにその点を質問したつもりなのだが、「アメリカ産大豆は心配ない」のひと言で片づけられてしまった)、キャノーラ油に対する大豆油の優位性をずっと述べてきたはずなのに「ハイオレイック大豆」という結局キャノーラに寄った特徴を持つ大豆の売り込みアピールなど、アメリカ産大豆産業が抱える矛盾点も感じた。
我々日本の油メーカーは、大豆生産には直接携わらずにそれを「輸入して」「使う」立場である。生産地で抱える課題や矛盾などに目を向けずに仕事をしていくことが可能だからこそ、多くの関係者にこうした機会をもっていただき、生産地の空気を感じることが重要であると感じる。
今回の研修で見聞したことを胸に刻みつつ、大豆使用者および大豆製品の供給者として責任のある仕事をしてまいりたいと考える。
そして、このような機会をくださったアメリカ大豆輸出入協会および引率の西村氏と、楽しい旅路にしてくださった日本メンバーの皆様に心より感謝申し上げます。
運営団体
アメリカ大豆輸出協会(U.S. Soybean Export Council:USSEC) は世界80ヶ国でアメリカ大豆の市場拡大や輸出のプロモーションをおこなうマーケティング機関です。USSECには優良な輸出業者・大豆生産者・政府機関・関連団体等がメンバーとして所属しております。
お問い合わせ
※ボタンを押すと当検定を管理運営しております一般社団法人コンピューター教育振興協会宛てにメールフォームが開きます。お客様の個人情報については、お問い合わせへのご対応・CS分析、推進以外の目的では使用いたしません。あらかじめご了承ください。