COLUMNコラム
2024年米国研修コラム
米国研修コラム|04
ハウス食品グループ(研修当時)
本社研究開発本部
グループ技術連携部
武藤 祐貴さん
研修にて最新で有益な情報をアップデート ディストリビューターと商談も
Pence Group Visit
「ペンスグループ」とは非遺伝子組み換え大豆、有機大豆、コモディティ大豆のプレミアム業者。シカゴとインディアナポリスの中間に位置するインディアナ州ラファイエットに拠点を置き、調達・加工・包装・CY 出荷を含むターンキー・ソリューションを提供している。大豆は高品質の特注穀物生産を専門とする生産者の独自ネットワークを通じて調達される。施設は USDA オーガニック認証を受けている。1万エーカーの農場を保有している。種子メーカーから大豆やコーンの種子を購入し、輸出なども行っている。炭素排出量、トレースアビリティなどにも気を付けている。ここで出荷されている大豆は主に豆腐、納豆などに利用されている(製油には利用されていない)。
大豆の品種に関する研究も独自で行っている。3年程度の年月をかけて収量の多い大豆の品種(38品種)を選定している。試験農場では「カバークロップ」と呼ばれる栽培方法を実施している。カバークロップとは土壌環境を守るために、収穫後の植物(ライ麦など)が残存する土壌に大豆の種をまき、大豆を生産する方法。ライ麦が土壌中に残存することで雑草などが生育できず、窒素が土壌中に入り込み、健康的な土壌が維持される。この健康的な土壌は大豆の成長時期の栄養素の支えとなるらしい。また、温室効果ガスの削減にも繋がる。さらに、残存するライ麦などが湿度を保ち、土壌の水分が乾燥しにくくなるメリットもある。
大豆の選別方法は以下の通りである。
① 専用サイロに大豆を受け入れ、篩で大きな異物を除去
② シフトスクリーンで小さな異物を除去
③ スパイラルセパレーターで大豆の形状違いで選別選別は全て自動化されている。
大豆の品質グレードは全部で4種類あり、豆腐用の大豆は No.1グレード品、製油用の大豆はNo.2グレード品であるとのこと。
Purdue Corn & Soy Innovation Center
大学の教員、スタッフ、学生に開放されている最先端技術を特徴とする研究施設(2016年~)。この種の施設としては北米で初めてのフィールド表現型検査施設と言われている。増加する人口を救うために、収益性の高いイノベーションを生み出すように設計されている。植物育種、エンジニア、コンピューター科学、航空科学の専門家が協力して、食料生産システム全体に影響を与える環境、つまりフィールドに適用するために各専門知識を適用している。
例えば、「シードカウンター」と呼ばれる機械を利用して大豆やコーンの種子量、大きさ、形状などを短時間で計測し、品種研究に生かしている。また、ハイパースペクトロカメラを搭載したドローンを用いて、農作物のフェノタイプを確認する研究も行われている(工学部の学生が実施)。
Farm Visit(Christopher Farms)
大豆とコーンを生産している農家。試験的に小麦と大豆を一緒に生産し、収穫量の試験を実施されていた。2種類の農作物を同時に栽培する方法を「インタークロッピング」と言う。
大豆やコーンを生産する際、秋頃に肥料をまき、春頃に種をまくようにしている。GPSが搭載された特注の大型トラクターを利用して種をまいている。このトラクターの価格は約6000万円くらい、5年~10稼働。燃料の価格は上げってきている。種子の価格が一番高く、その次に肥料の価格が高いそう。ここの農場では5名程度で生産を行っている。ここの農家が生産している大豆は主に飼料用であるとのこと。
Farm Visit(Eck Family Farming)
三世代目の大豆農家で、トマトや大豆、コーンの生産また種子の生産、さらには高オレイン酸大豆の生産も行っている(2011年からレッドゴールド・トマトを栽培)。その短期間に、卓越した栽培とスチュワードシップに対してマスター・グロワー・アワードを2度受賞している。将来に向けて土壌が腐敗しないような工夫をされており、カバークロップ農作法を採用している。
高オレイン酸大豆に関して注意していることとして、他の品種とコンタミが起こらないように気を付けている。高オレイン酸大豆の収穫量や脂質含有量は一般の大豆とほとんど差はない。ここの農家では全大豆生産量のうち、70%が高オレイン酸大豆であるとのこと。
農作物を生産する上で、政府の法規を遵守し、農作する土地の確保が大事であるとのこと。1992年から不耕起栽培を実施。コーンより大豆の方が多少劣悪な環境でも生育するとのこと。大型コンバイン→秋ごろに小麦を収穫したり、大豆の収穫にも利用される。
トラクター → 耕作に利用される。
スプレーヤー → 殺虫剤の散布に利用される。
High Oleic Demonstration and supplier meetings at Victory Field
高オレイン酸大豆を販売しているメーカーと商談を実施した。日本チームからは当社のみが商談を行った(計4社)。
① The Delong Co., Inc.
HFAと取引がある?とのこと。高オレイン酸大豆を取り扱っており、サンプル100kg無償で提供してくれるとのこと。
② SCOULAR
HFAと取引があるとのこと。ここでも高オレイン酸大豆を取り扱っているが、サンプルは有償で提供可能とのこと。NonGMO 大豆の量は取り扱っている全大豆のうち約10%程度。オハイオ州やイリノイ州が産地の大豆を取り扱っている。
③ JIM TRAUB TRADING, LLC
ここではタンパク質含量42~43%、脂質20%程度の良質な品質の高オレイン酸大豆を取り扱っている企業。サンプルは無償提供可能。
④ QUALITY ROASTING
高オレイン酸大豆油の取り扱いをしている企業。溶剤抽出せず圧搾法で油脂を抽出されている。高オレイン酸大豆にはγトコフェロールが多く含有しており、他の油脂と比較すると酸化安定性は一番良いとのこと(OSI 値)。
Indiana Soybean Presentation(Indiana Soybean Alliance)
インディアナ大豆アライアンス ISA:全米の各大豆生産州にある事務所のインディアナ州バージョンで、教育・研究・広報活動を行う。インディアナ州は日本が多くを輸入していた「IOM 大豆」でも知られる主要大豆産地。年間約900万 MT の大豆が生産されている。この施設内で改めてアメリカ産大豆の魅力及び高オレイン酸大豆の価値について説明を受けた。
BBQ Reception at Howell Farm(David & Mary Howell Farm)
オーウェル農場は1972年、300エーカーの借用地でデビッドとメアリー・ハウエルによって設立し、トウモロコシと大豆を生産し、豚事業を営んでいた。2013年にハウエル・ファームズ・オブ・クロスローズ LLCは農場の運営会社として設立され、現在もインディアナ州中部に本社を置く多角的な家族農業ビジネスで、伝統的なトウモロコシ、大豆、麦芽用大麦、小麦粉加工用の小麦に加え、レッドゴールド・トマトも生産している。
この農園のガレージ内で今回米国研修に参加した全11か国、110名がBBQレセプションに参加し、楽しい時間を過ごした。
ホテル周辺のスーパーマーケット市場調査
・trader joe's
トレーダー・ジョーズは、各種食料品を始め、多くのオリジナル商品の展開でも知られる。
・whole foods
グルメ・フード、自然食品、オーガニック・フード、ベジタリアン・フード、輸入食品、各種ワイン、ユニークな冷凍食品も品揃えし、
いわゆる「グルメ・スーパーマーケット」と呼ばれる比較的高級志向の食料品小売店。
・kroger
アメリカの食品雑貨販売業において、ウォルマートやホームデポと共に大手企業の一角となっている。
スーパーマーケットに加え、ガソリンスタンドも営業している。
SBO Masters Celebration Day
油脂の市場について
インフレ及び戦争などにより油脂全体の価格は不安定。ウクライナからの輸出が大きく減少。今後もこのような状況は続きそう。
大豆油の市場について
中国での大豆油の生産が増加している。ブラジル南部で降水量が増加しており、大豆油の量に影響が出る可能性もあり。大豆油からバイオディーゼルの生産が大きく増加している。
高オレイン酸大豆油のフライ油での価値
通常の大豆油と高オレイン酸大豆油でフライ試験すると、高オレイン酸大豆油の方が着色しにくく、極性化合物の量(重合物)の生成量が少なく、泡の発生量が少ない。したがって高オレイン酸大豆油を使用することで長鮮度化に繋がる。フライ試験後の残存油の量にも差があり、高オレイン酸大豆油の方が約9%分多く残っていた(粘度が低いため、油切れが良い)。
サステナビリティ―について
人、地球、利益 → サステナビリティ
気候変動に対し、多くの人が心配しており、大手世界企業「ユニリーバ」、「ネスレ」、「ダノン」、「ウォールマート」が持続可能な社会の取り組みをリードしていくとのこと。アメリカ大豆農家全体の97%が家族経営をしており、次世代に繋げていくよう努力されている。アメリカ大豆は2025年までに大豆土地利用をこれまでより10%削減していく予定。環境への考慮を意識して取り組まれていることを強く感じた。
INDY500参加
世界三大モーターショーの1つ。インディアナポリスで開催されるレース。米国研修に参加したほとんどのメンバー(一部帰国した国もあり)が参加した。
愛知県知事と遭遇する場面もあり、記憶に残る瞬間でもあった(愛知県とインディアナポリスは姉妹提携都市+佐藤琢磨選手の出身地が愛知県)。
今回の視察研修を終えて
今回参加した USSEC 米国研修は非常に多くのことを学べる機会であったと思う。これまで自身が扱ってきた大豆やコーン、小麦などがどのような場所でどのような仕組みで生産されているかをよく理解できたと思う。
アメリカの大豆農家は家族経営がほとんどで、息子・娘たちの世代にも安全で安定的な農作(サステナブル)ができるよう努力されていることを実感した。また、土壌環境や地球環境に対し、しっかりした配慮を持ちながら効率的+高利益が得られるよう工夫しながら農作されていた。非常に広大な土地で多くの穀物を取り扱っていることを自身の目で確認することができ、アメリカの壮大さを改めて認識できた。いっぽうで、人口増加や温暖化に対する解決策には課題が残っていることも実感した。個人的な考えではあるが、アメリカ大豆生産者が実施しているサステナブルな経営方針を日本でも導入することができれば、農業の後継者不足に関する課題を解決していけるのではないかと思った。
高オレイン酸大豆の特徴やディストリビューターと商談する機会もあり、当社の豆腐製品に生かすメリットがあると実感した(風味向上+長鮮度化)。多くの最新で有益な情報をアップデートすることができ、大変有意義であった(多くの海外の方とも連絡先を交換できた)。
改めて今回の米国研修に選出していただきまして本当にありがとうございました。
運営団体
アメリカ大豆輸出協会(U.S. Soybean Export Council:USSEC)は世界80ヶ国でアメリカ大豆の市場拡大や輸出のプロモーションをおこなうマーケティング機関です。USSECには優良な輸出業者・大豆生産者・政府機関・関連団体等がメンバーとして所属しております。
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