COLUMNコラム
2024年米国研修コラム
米国研修コラム|03
食用油メーカー
S.Tさん
栽培方法への探求心、 効率化を求める農家の姿に感銘を受けた
Pence Group社 ポール・ペンス氏(CEO)
・1万エーカー(東京ドーム約868個)の規模を持つ家族経営の農家で、主に豆腐用のNonG大豆、有機大豆を取り扱っている加工業者
・種子メーカーとのつながりを重要視しており、トラックには種子メーカーのロゴが印字されている
・単なる「種子」ではなく、「食べ物」を生産する、という意識を強く持ちながら仕事をしている
・シカゴとインディナポリスの中間に位置するラファイエットに拠点
・調達、加工、包装、出荷までを行い、種からの栽培テストを実施している
・高品質の特注生産を専門とする生産者の独自ネットワークを通じ、種子を調達
・USDAオーガニック認証済み
・2-3年ごとに品種テストを行っており、24年は38品種をテスト中。テスト内容は単収、BYへサンプルを送り品質の確認を実施
・「不耕起栽培」を行っている。耕さないため、作業効率、燃料削減、CO2削減と様々なメリットがある
・カバークロップ(被覆植物)を研究しており、メインはライ麦を使用⇒雑草をコントロールし、水分を保護、窒素の保持をし、ミミズの活性化を図る
・ポリエチレン製のホールを地中90cmに埋め、排水効率UP、水分の一定化を図っている
●ラファイエットの立地、物流費に関して質問したところ、シカゴから約200kmあるが、ハイウェイがすぐ近くにあるので非常に効率が良いとのこと。
●農家の探求心、効率化を実感することができた。不耕起栽培に関しては水はけが悪くなるのではと疑問だったが、地中にホールを埋める排水効率UPの方法を採用しており、非常に驚いた。また収穫時はホールを巻き込まず問題ないとの事。
収穫から袋詰めまで
①収穫した大豆は、サイロに入り、(1970年製の)クリーナーで異物を除去し、再クリーナーをかけ細かい異物を除去する
②スパイラル型のロータリーセパレーターに入り、丸いものだけが選別され、楕円型や歪んだ大豆は下に落ちる
③カメラで色を確認するカラーソーターを使用し、選別
④コンテナ、袋詰めを行い、出荷(袋詰めは1t~30kgまで可)
インディアナコーン・大豆 イノベーションセンター ジェイソン・アダムス氏(管理者)
・大学教授、スタッフ、学生に開放されている、最先端技術研究施設
・コーン、大豆の生産者やISA(Indiana Soybean Alliance)からの資金で成り立っている
・約1,500エーカー(東京ドーム約130個)の土地があり、牛、豚、鶏、羊、魚も飼育しているが、メインはコーンと大豆の研究
・Pence Groupと同様にここでもホールを地中に埋める排水システムを活用している
・大豆に関してはNonG、GMOの両方があり、またソルガム(モロコシ)も栽培しており、病気や干ばつ耐性も研究
・DNA研究も行っており、新たに開発した種子がどのように育つか、(※)表現型(フェノタイプ)を確認し、研究のためにデータ取得、数値化を行う
※生物の複合的で観察可能な特徴や形質のこと
Christopher Farms
・2,800エーカーの規模を持つ家族経営の農家(東京ドーム約243個)
・主に飼料用のコーン、大豆をメインに栽培しており、24年度はコーンがメイン
・5/23(木)時点で約2週間ほど作付が遅れてしまっており、収穫は9月半ばを予定
・「ファーム改革」と題し、テスト的に「大豆と小麦を同時に」栽培している(インタークロッピング農法)
⇒大豆を5月に作付し、秋に収穫するが、同時に小麦の作付を行う(小麦はカバークロップ用ではない)
この同時栽培による大豆、小麦への影響はほとんどなく、効率化につながっている
コンバインで収穫の際、それぞれにダメージはなく、1エーカーあたり、小麦は70ブッシェル、大豆は50ブッシェルの収穫
今後もデータを蓄積し、メリットを追求していくとのこと
・ここでもホールを地中に埋める排水システムを活用している
・コスト要因のとしてはやはりコンバイン等の機械購入費が高く、作付用プランターは1機で約4,000万程
排水システムのホールが1エーカーで1,100ドル(約17万)、肥料は1エーカー当たり6$、燃料は2$と安い
●大豆、小麦を同時に栽培することで発育障害の懸念があるのではと感じたが、ほとんどなく、かなりの効率化であることがわかった。
●プランターや肥料農機は人の運転で行っていると思い込んでいたが、基本的にGPSを使用し、まっすぐ、かつ作物との間(条間)を計算しており、
緻密にかつ効率化を図っており、非常に驚いた。
Eck Family Farming
・2,500エーカーの規模を持つ家族経営の農家(東京ドーム約217個)
・大豆やコーンの他、プロセストマトも栽培
・リサーチ用でもコーンを栽培しており、約1,200もの品種をテストし、単収比較を行っている
・Pence Groupと同様にカバークロップ(被覆植物)やホールを埋めた排水システムも活用している
・高オレイン酸大豆を栽培
・過去は1エーカーあたり50ブッシェル以下の収穫であったが、今は多いときには70-80ブッシェルまで上がってきている
・大豆orコーンorその他なのか、スプレッドシートを見て、「利益」「効率化」を追求している
●高オレイン酸大豆の栽培方法について確認したところ、通常の大豆と同じではあるが、他の大豆や作物と混ざらないよう、保管も含め徹底した管理を行っていることがわかった。
●農家として大変な点は、「都市化」が進み、土地や水路の確保が重要であり、そのための法律の知識も学んで行かなければならないとのこと。
●また、若い人が農業になかなか従事せず、人手不足である、といった点は日本と同様であると感じた。
●実際にトラクターに乗車させて頂くという貴重な体験を行うことができた。
Victory Field
・インディアナポリスのホワイト・リバー州立公園内にある球場
・マイナーリーグに所属するインディアナポリス・インディアンズのホームスタジアム
・ISA(Indiana Soybean Alliance)と契約しており、ここでの食事は高オレイン酸大豆油を使用している
●揚げ物は、やはり高オレイン酸大豆油を使用していることもあり、非常にあっさりして食べやすい。
ISA(Indiana Soybean Alliance)コートニー・キンガリーCEO
【インディアナについて】
・農業生産高 全米8位 ・インディアナの大豆の70%が高オレイン酸大豆
・面積 全米30位 ・95%が家族経営
・大豆生産高 全米5位 ・平均農地は264エーカー
・大豆輸出高 全米1位 ・平均年齢55.5歳
【ISAの使命】
・インディアナの大豆を広め、進化させていく
【4つの戦略】
①市場開発・・・インディアナは面積は小さいが大豆の生産高は全米5位、輸出は1位である強みを生かす
②サステナブル・・・不耕起栽培とカバークロップ(被覆植物)の活用、適切な肥料の使用
③価値創出・・・大豆の新しい機会を(石油やプラの代替)
④エンゲージメント・・・農家とのコミュニティを深める
【Q&A】
Q:バイオ燃料の需要増による食用への価格影響はあるのか?
A:USでは充分な量があり、対応できると考えている。
Q:都市化による農地減少に関して、収穫量への懸念はないのか?
A:不耕起栽培や被覆植物、テクノロジーの進化で収穫は増えている。農地を増やさなくても問題はないと考える。
●ISAで取り扱っているアイテム(下記写真)に関して、日本では一斗缶が主流である点を伝えたところ、廃棄適正や環境の面から、ボトル&段ボールがメインとのこと。弊社商品の画像を見せたところ、「とても美しい」と感想を頂くことができた。
Howell Farm
・300エーカーの規模を持つ農場
・コーン、大豆、麦芽用大麦、加工用の小麦に加え、レッドゴールドトマトも生産している
●ここではBBQを開いて頂き、ナマズとスズキ目の淡水魚のフライを頂くことができた。こちらでも高オレイン酸大豆油を使用しており、非常にあっさりして食べやすく、魚の味をしっかりと感じることができた。
SBO Masters Celebration Day
【stoneX ロドリゴ氏】
・植物油の市場について
2020年のパンデミックにより価格が不安定に。
さらに、昨今のインフレ、戦争によりひまわりキャノーラパーム全ての市場価格が不安定になっている。
24/25は生産増の見通し、パームも増加、ひまわりは前年並み。
キャノーラはEU23%、カナダ21%、中国18%。天候が良いカナダに依存する可能性がある。
パナマ運河の枯渇の情報があったが、7月には改善の見通し。中長期的には問題無し。
大豆輸出はアルゼンチンが1位。ブラジルでの雨が増加しているが、収穫に影響は無し。
アメリカはバイオディーゼル使用の影響で、輸出減。
バイオ、再生用の生産予測は今後も増えていく見通し。
⇒戦争、通貨政策、天候、SAF(持続可能な航空燃料)が大きく関わってくる。
【Airable社 バリーマクロ氏】
・会社紹介
waxcoatingsolution:トラックのグリスの代替に使用している。
DeWALT Bar&chain Oil(98%soyベース):6万ガロンの代替が可能。
Roof Maxx roof:アスファルトの寿命を延ばすための屋根にふきかける大豆油。
石油代替なので地下水への影響も少ない。
【USSECのコンサル担当 ジョージ氏】
・高オレイン酸大豆について
リノール、リノレンが少ない。従来オレイン酸は22%だが、高オレイン大豆は78%。熱体制が高い。
①フライ耐性〇
②交換回数減る
③フライヤー周りがクリーンに保てる
④泡が少ない
高オレイン酸大豆油はトランス脂肪酸が無い。通常油より高いが、長く使えるので、長期的に見てコストダウンが可能。
【SOY ニュートリオン研究所 Dr.ミッシェルブラウン】
・大豆の健康メッセージ
人の臨床試験を行っている。
油、豆、たんぱくsoy milk、soy yogurt・・・米国では税制構造より、何を食べるか、のほうが難しい。
不飽和脂肪酸を推奨。
ダイエットのために大豆油を!
サラダ油=大豆油とわかっていない人が多い・・・
飽和⇒不飽和に置き換えることが重要であり、1.5杯のスプーンの量で心臓病を予防することができる。
大豆は他の食材と比べてアレルギーは低く、精製された大豆油でアレルギーが出ることはない。
【INOLASA社(コスタリカ)】
・会社紹介
ハイオレ大豆、ひまわり油を扱っており、ラテンアメリカで初のUSSECと契約を結んだ会社。
Capullobブランドのオイル。DHA配合の100%大豆油を扱っている。
ローリー車、バルク、35lbボトル、5kgボトル
【USSECマネージャー タリック氏】
・持続可能性について
市場のトレンド:2023年のデロイトのデータでは環境問題に意識があるのはZ世代、ミレニアル世代に多い。
消費者の5%はサステナブルにお金を払っても良い、と考えている
ユニリーバ、ネスレ、ダノン、ウォルマートが先立って環境問題に取り組んでいる
・カーボンフットプリントについて
アメリカの大豆に優位性があると考えている。
SSAPについて・・・アメリカ大豆農家のサステナビリティプログラムの1つであり、環境、社会、経済面における
サステナビリティの成果の長期的な改善に貢献していく。
INDY500観戦
・インディアナコーン協会が協賛
・燃料にはエタノールを使用している
・姉妹都市とのことで視察されていた、愛知県の大村知事ともご挨拶ができた
●ここではBBQを開いて頂き、ナマズとスズキ目の淡水魚のフライを頂くことができた。こちらでも高オレイン酸大豆油を使用しており、非常にあっさりして食べやすく、魚の味をしっかりと感じることができた。
今回の視察研修を終えて
栽培方法はもちろんのこと、農家の探求心、効率化を求める姿に非常に感銘を受けました。カバークロップや排水システム、インタークロッピング農法は、SDGsの観点はもちろんですが、都市化による農地減少や担い手の減少をこのように効率化することでカバーしつつも、利益の追求・改善・最大化(単収UP)ができていると感じました。
日本の家庭用油脂では、なかなか日の目を見ない大豆油ですが、高オレイン酸大豆に関しては、オリーブオイルと同等のオレイン酸を配合しているため、風味の観点を除くと、オリーブオイルの代替として、健康価値訴求によって広がる可能性があると感じました。また、生産量の観点からもスペインのオリーブオイル生産量とは比にならないため、安定供給も図れるのではないかと思われます。
今回の視察では、油の原点と農家の強い意志を確認することができました。社内外問わずこの経験と知識を生かし、説得力の増す説明、コミュニケーションを図っていきたいと思います。
最後になりますが、このような充実した研修にご招待頂き、誠にありがとうございました。
運営団体
アメリカ大豆輸出協会(U.S. Soybean Export Council:USSEC) は世界80ヶ国でアメリカ大豆の市場拡大や輸出のプロモーションをおこなうマーケティング機関です。USSECには優良な輸出業者・大豆生産者・政府機関・関連団体等がメンバーとして所属しております。
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