COLUMN

米国研修コラム|03

鯨井 陽佑

大手食用油メーカー
鯨井 陽佑さん

米国で生産が進む高オレイン酸大豆 すでに中国へ輸出も

アメリカ大豆輸出協会(USSEC)は、米国視察研修プログラム「JAPAN SOY OIL MASTERS TEAM 2019」を7月21日~28日の8日間の日程で実施しました。これは、大豆(油)のサプライチェーンを巡る研修企画であり、「第2回 ソイオイルマイスター検定」(2018年5月実施)に合格し、その中から選抜されたソイオイルマイスター7名が参加しました。
今回は、「高オレイン酸大豆(油)」編として、大手食用油メーカーで業務用油脂の営業マンとして活躍されているソイオイルマイスター、鯨井陽佑さんに報告していただきます。

穀物メジャーでは、作付面積の拡大を見込む

今回の視察研修では、米国穀物メジャーのBunge社を訪問し、日本市場では取り扱いのない「高オレイン酸大豆(油)」について、学ぶことができました。
高オレイン酸大豆「Plenish」は、大手種子メーカーCorteva Agrisicience社(旧DuPont Pioneer社)が開発した新しい大豆品種で、米国では2012年から生産されています。
高オレイン酸大豆は、脂肪酸組成でオレイン酸の構成比が65~75%と、オリーブ油と比べて同等以上であり、従来の大豆油と比べて飽和脂肪酸が20%減へと改良された大豆です。調理面では、他油種の高オレイン酸製品と比べて加熱安定性が高く、長時間使用できる点が特徴です。一方、利用環境面では、泡立ちや、フライヤーの汚れが低減されるため、油の使用量削減に繋がると言われています。
現在、Bunge社では約40万エーカーの規模で農家と契約を締結(全体の約5%)しており、国内での流通のみならず、既に中国などへも輸出されています。現時点では、生産・流通規模は小さいものの、メーカーなどの需要もあり、今後伸長していくことが期待されている品種です。Bunge社では、将来的に作付面積が8~10倍になることを見込んでおり、2021年には375万エーカー、2026年に1,500万エーカーへの拡大を目指しています。現状の価格は従来品に比べて25%ほど高いですが、これらの生産目標が実現すると、今より生産コストを下げることが可能になり、今後市場への普及拡大が期待されています。機能性商品の拡販は、日米にとってメリットがあることだと思いますので、引き続き情報収集するように努めたいと思います。

  • パデュー大学の食堂では、高オレイン酸大豆油で揚げた料理や、高オレイン酸大豆油の入ったドレッシングでサラダを試食。えびの天ぷら。
  • パデュー大学の食堂では、高オレイン酸大豆油で揚げた料理や、高オレイン酸大豆油の入ったドレッシングでサラダを試食。揚げバナナのデザート。
  • パデュー大学の食堂では、高オレイン酸大豆油で揚げた料理や、高オレイン酸大豆油の入ったドレッシングでサラダを試食。サラダとドレッシング。

Bunge社と同じインディアナ州にあるBeck's農場センターは、大豆の収量アップや栄養価のアップなどの研究が行なわれています。近くのパデュー大学と共同研究も行なわれており、同大学の学生から、現在行われている高オレイン酸大豆および低リノール酸大豆の研究内容についてもお話を伺うことができました。
パデュー大学の食堂では、実際に高オレイン酸大豆油を使用しています。以前はキャノーラ油を使用しており、当時は6日間で油交換を行っていたそうですが、9日間に延長し、さらに高オレイン酸大豆油に変更したことで、コストダウンが可能になったという説明を受けました。味わいに関しては、揚げ物やドレッシングも、よりあっさり仕上がるようになったとのことです。

  • Bunge社の工場外観
    Bunge社の工場外観
  • 大豆、とうもろこしを中心に栽培するインディアナ州のPhil Ramsy's農場
    大豆、とうもろこしを中心に栽培するインディアナ州のPhil Ramsy's農場
  • 日頃、見る機会のなかった大豆の葉と花
    日頃、見る機会のなかった大豆の葉と花
  • Beck'sの農場センターでのパデュー大学の学生による研究成果発表の様子
    Beck'sの農場センターでのパデュー大学の学生による研究成果発表の様子

油脂の営業マンとして、農場、流通経路の視察は貴重な経験に

今回の視察研修では、米国大豆の広範なサプライチェーンを見て周ることができました。その中でも、特に印象的だったのが、Phil Ramsy's農場(インディアナ州)での大豆畑見学、CGBリバーターミナル(オハイオ州)、全農グレイン(ZGC、ルイジアナ州)でした。Phil Ramsy’s農場は、大豆、とうもろこしを中心に栽培する大規模農家で、4,000エーカーのスケールに圧倒されました。CGB社は、全農と伊藤忠商事の出資会社として三カ所のリバーターミナルを運営しており、約4,000社と取引をしています。ここでは、サイロや搬入経路、バージ、検品を行う施設などを見学しました。ZGC社は全農の子会社であり、単一の穀物輸出エレベーターとしては世界最大級のエレベーターを保有しています。ここでは、バージからの搬入経路、サイロ、パナマックスへの積み荷工程など、一連の物流形態を見学することができました。
また、ホールフーズ、トレーダージョーズ、ウォルマートなどの流通の現場も視察することができました。ホールフーズでは、大豆油は販売されておらず、オリーブオイルなどが充実していました。一方、ウォルマートでは大豆油がメインで販売されており、価格は2ドル(1リットル)ほどで日本と大きな差はありませんでした。

現在の所属企業では米国大豆等を搾油しており、私は業務用油脂の営業担当として油を販売しています。そのため、以前より自分が販売している原料及びその流通経路には興味があり、今回の視察研修を通じて一連の流れを学べたことは貴重な経験となりました。特に、一面に広がる大豆畑とミシシッピ川を中心とした物流を実際に見ることができ、大変勉強になりました。
実際に大豆農家の方から、今期の大豆作付状況を直接お伺いする機会もありました。今期の大豆は春先の降雨により、作付が遅れ、20~25%程収穫量が減少する可能性があるとお伺いしました。このようなことは、40年間にわたり農業を行ってきた中で初めての経験とのことでした。また、ミシシッピ川の水位が上昇していることも確認でき、厳しい状況であることを実感することができました。
今後、こうした生産現場の情報や声を、相場状況説明や日頃の商談機会などの際にお伝えし、取引先に対して少しでも相場状況などをご理解いただけるよう、努力していきたいと考えています。

  • ニューオリンズにある全農グレイン(ZGC)社は、日本への大豆輸出の一大拠点。スケールの大きい物流工程を見学①
    ニューオリンズにある全農グレイン(ZGC)社は、日本への大豆輸出の一大拠点。スケールの大きい物流工程を見学①
  • ニューオリンズにある全農グレイン(ZGC)社は、日本への大豆輸出の一大拠点。スケールの大きい物流工程を見学②
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運営団体

アメリカ大豆輸出協会(U.S. Soybean Export Council:USSEC) は世界80ヶ国でアメリカ大豆の市場拡大や輸出のプロモーションをおこなうマーケティング機関です。USSECには優良な輸出業者・大豆生産者・政府機関・関連団体等がメンバーとして所属しております。

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