COLUMN

米国研修コラム|02

小沢 学

ベジプロフーズ
小沢 学さん

Cover Cropの重要性を学ぶ インディアナ州が実践するサステナブルな大豆生産

アメリカ大豆輸出協会(USSEC)は、米国視察研修プログラム「JAPAN SOY OIL MASTERS TEAM 2019」を7月21日~28日の8日間の日程で実施しました。これは、大豆(油)のサプライチェーンを巡る研修企画であり、「第2回 ソイオイルマイスター検定」(2018年5月実施)に合格し、その中から選抜されたソイオイルマイスター7名が参加しました。
今回は、「サステナビリティ」編として、業務用油揚げメーカー、ベジプロフーズで工場長として活躍されているソイオイルマイスター、小沢学さんに報告していただきます。

成果を上げる「Upper White Cover Crop Program」

今回の視察研修は、前半がインディアナ州、後半がルイジアナ州で行われました。前半の視察先は、大豆サプライチェーンの川上に当たる部分です。米国では長年にわたり、インディアナ州をはじめ各地域において、サステナビリティのアプローチで大豆生産、研究開発が実践されています。

最初に訪問したインディアナ大豆アライアンス(ISA)は、全米の各大豆生産州にある大豆協会事務所の一つです。ここでは、「Production(生産)and Environment(環境)」というテーマに沿って、ISA職員からインディアナ州における様々なサステナビリティの取り組みについて説明していただきました。また、米国農務省 自然資源保護局(USDA NRCS)インディアナ州資源保護係の方が、土壌サンプルを使用した実演テストを行いました。

特に、インディアナ州で大きな成果を上げている施策が、「Upper White Cover Crop Program」です。「Cover Crop」(カバークロップ:被覆作物)とは、風雨による土壌侵食を防いだり、農地の土壌構造を改善するために植える作物のことです。Cover Cropは、短期間で地上に生えてくるため、土壌を守ったり、地下深く根を張る作物(例:ライ麦・大根など)を植えることにより、土壌に有機物を蓄え、さらに炭素を貯留することで地球温暖化の緩和にも効果が期待されています。

ISAでの視察研修を通じて、Cover Cropが土壌改善と保護にとっていかに重要であるか、さらに生物多様性の観点からもいかに重要な取り組みであることが理解できました。講義中、参加したソイオイルマイスターからは、「Cover Cropは生育後、収穫して販売していないのですか?」という質問も出ました。Cover Cropには、ライ麦などを栽培して換金可能な「Cash Cover Crop」や、生産中の雑草を抑制する「Clover Cover Crop」などがあります。Cover Cropは、土壌を守るためのツール的な役割と言えます。

  • Cover Cropを植えた不耕起の土壌(左)と植えていない耕起の土壌(右)による透水テスト
    Cover Cropを植えた不耕起の土壌(左)と植えていない耕起の土壌(右)による透水テスト

進む大学との共同研究、成果は生産者と共有

ISAでは、生産の研究として畑の土壌栄養素サイクルデータ解析により栄養素の変化を調査し、畑ごとに必要な栄養素を管理する単収アッププログラムが行なわれています。そこでは、大学との共同研究も行なわれており、マンチェスター大学とは二枚貝(ムール貝)による負栄養塩流出に関する水質研究調査プログラム、パデュー大学とは種子やCover Cropの研究プログラムが行なわれており、それらに対して資金提供を行っています。研究成果は農家へ共有されます。また、管理方法を最適化するプログラムとして、ドローンやGPSなどの技術を駆使し、適切な場所に適正な量だけの農薬や肥料を撒く栄養管理についてのプレゼンテーションもありました。
それぞれのプログラム説明の間、参加者からの多くの質問に対して丁寧に回答いただくなど、ISAでの視察研修を通じて、インディアナ州における大豆生産のサステナビリティのアプローチとその大切さについて知る貴重な機会となりました。

その後実際に、インディアナ州の大豆農家にも訪問し、Phil Ramsy’s Farmでは2019年産播種時期の雨の影響と生育状況を確認することができました。Phil Ramsy’s Farmは、4,000エーカーの面積を誇る大規模農家で、とうもろこし(50%)、大豆(40%)、大麦、小麦(10%)を栽培しています。関係者によると、この農場ではCover Cropがしっかり残っている畑では比較的生育は良く、雨で流されてCover Cropが少なくなっている畑の端の方では背丈が短いものが多いということで、Cover Cropの重要性について改めて生産現場で再認識することができました。

視察研修の後半は、米国内の大豆集荷、海外への輸出拠点となっているルイジアナ州、ニューオリンズに移動して行われ、ここではJA全農の子会社、全農グレイン(ZGC)を訪問しました。同社では世界最大級の穀物輸出エレベーターを保有しており、ここから日本、中国、インドネシアなどのアジア向け、コロンビアなどの中南米向けに輸出しています。特に日本、韓国、台湾の企業関係者からは、昨今サステナビリティについての依頼(例えば、米国大豆のサステナビリティ認証を大豆出荷とともに発行してほしいというような依頼)が増加しているとの説明があり、グローバルでサステナビリティへの関心が高まっていることを実感しました。韓国向けの出荷の殆どは、このZGC社のエレべーターより出荷されています。そのため、韓国向けの米国大豆は、ZGC社の協力によりほぼサステナビリティ認証付き大豆と言えます。

  • Phil Ramsy's Farmの大豆畑(Cover Crop枯れたライ麦)
    Phil Ramsy's Farmの大豆畑(Cover Crop枯れたライ麦)
  • ミシシッピ川に架かる穀物搬送用の巨大傾斜式ベルトコンベア
    ミシシッピ川に架かる穀物搬送用の巨大傾斜式ベルトコンベア

サステナブルな大豆で油揚げを生産、認証ロゴを通じて情報発信

今回の視察研修を通じて、米国大豆(穀物)の生産が一連の環境保全プログラムに基づいて運営され、実際に成果を上げており、サステナビリティに対する取り組みが重要であると再認識しました。視察先も、生産、搾油、研究の現場から支援機関、検査機関、穀物会社、バイオ燃料会社、流通、輸出拠点とバラエティに富み、普段の仕事では得られない刺激を受けました。
米国ではアメリカ大豆輸出協会(USSEC)が、「大豆サステナビリティ認証プロトコル(SSAP)」を2013年に開発し、米国の輸出する大豆の25%がSSAP認証を受け、ロゴマーク入りで出荷されています。私自身、油揚げの製造現場に携わっており、米国大豆を利用しています。視察研修で学んだことを活かしながら、今後もサステナビリティ認証大豆を使用した製品の開発、提供を通じて、米国大豆のサステナビリティの取り組みについて発信して行きたいと考えています。つい最近、早速、所属企業の親会社の方でも、サステナビリティ認証米国大豆を使用する全商品に、認証ロゴが印刷されることが決まりました。

運営団体

アメリカ大豆輸出協会(U.S. Soybean Export Council:USSEC) は世界80ヶ国でアメリカ大豆の市場拡大や輸出のプロモーションをおこなうマーケティング機関です。USSECには優良な輸出業者・大豆生産者・政府機関・関連団体等がメンバーとして所属しております。

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